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フィリピンに防衛装備品を無償供与、OSA初適用。

はじめに

2023年11月3日、岸田文雄首相はフィリピンを訪問し、フェルディナンド・マルコス大統領と会談した。この会談で、日本政府はフィリピンに防衛装備品を無償で供与することを発表した。これは、価値観を共有する国の軍に防衛装備品の無償供与などを行う「政府安全保障能力強化支援」(OSA)を初めて適用したものである。この記事では、この合意の背景と意義について解説する。

OSAとは

OSAは、2019年に制定された「安全保障関連法」の一環として、2020年に創設された枠組みである。OSAは、日本政府が同志国の軍に対して、防衛装備品の提供やインフラの整備などを行うことができるようにしたものである。OSAの目的は、日本の安全保障上の利益に資する国や地域の安定を促進することである。OSAの対象国は、日本と価値観や戦略的利益を共有する国であり、現在はフィリピンのほかに、インドネシアベトナム、マレーシアの4か国が選定されている。

フィリピンへの無償供与の内容と目的

岸田首相とマルコス大統領の会談で、日本政府はフィリピンに対して、小型警備艇や沿岸監視用のレーダーを無償で供与することを合意した。これらの装備品は、フィリピンの海洋での安全保障能力を強化することを目的としている。特に、レーダーは、南シナ海の領有権を巡って中国と対立するフィリピンにとって、重要な情報収集能力を向上させるものである。日本政府は、フィリピンに6億円相当のレーダーを供与する予定である。

この無償供与の背景には、中国の覇権主義的な動きに対する懸念がある。中国は、南シナ海の広範囲にわたって自国の領土と主張し、人工島の建設や軍事施設の設置などを行っている。これに対して、フィリピンは、南シナ海の一部を自国の排他的経済水域EEZ)と主張し、中国の行動を国際司法裁判所に提訴した。2016年に、裁判所はフィリピンの主張を支持し、中国の主張を無効としたが、中国は判決を拒否し、南シナ海での一方的な現状変更の試みを続けている。

日本は、南シナ海の平和と安定が自国の安全保障にとって重要であると考えている。南シナ海は、日本のエネルギー資源の約8割が通過する海域であり、自由で開かれた海洋秩序の維持が日本の国益にかかわる。また、日本は、東シナ海でも、尖閣諸島をめぐって中国と対立しており、中国の軍事的な挑発に対抗する必要がある。このため、日本は、中国と対立するフィリピンとの連携を強化することで、中国に対する牽制効果を高めることを狙っている。

その他の合意事項と今後の展望

岸田首相とマルコス大統領の会談では、無償供与のほかにも、以下のような合意事項があった。

  • 自衛隊とフィリピン軍による共同訓練をしやすくする「円滑化協定」(RAA)の締結に向け、交渉入りすること
  • 12月に東京で開く日本と東南アジア諸国連合ASEAN)の特別首脳会議に向け、協力すること
  • 新型コロナウイルスの感染拡大に対する支援や、経済回復に向けた協力を強化すること

これらの合意は、日本とフィリピンの関係をさらに深化させるものである。日本とフィリピンは、戦略的パートナーシップを構築しており、安全保障だけでなく、経済や社会などの分野でも協力している。両国は、価値観や利益を共有する国として、東アジアの平和と安定に貢献していくことが期待される。

岸田首相とマルコス大統領の会談では、無償供与のほかにも、以下のような合意事項があった。

まとめ

岸田首相は、フィリピンを訪問し、マルコス大統領と会談した。この会談で、日本政府は、OSAを初めて適用し、フィリピンに防衛装備品を無償で供与することを合意した。この合意は、中国の覇権主義的な動きに対する懸念から、フィリピンの海洋での安全保障能力を強化し、日本とフィリピンの連携を強化することを目的としている。また、両国は、安全保障以外の分野でも協力を強化することで、日本とフィリピンの関係をさらに深化させることを確認した。日本とフィリピンは、同志国として、東アジアの平和と安定に貢献していくことが期待される。